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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

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腐敗惑星● (22)から

SF小説■腐敗惑星■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://w3.poporo.ne.jp/~manga/pages/
(腐敗惑星22)
 独立装甲兵団の兵士は寂寥王によって地祭りに上げられていた。16面体のやりを寂寥王が利用したのだ。
 16面体が意識を取り戻してきた。16面体と寂寥王は戦おうとする。
「もう、おやめ下さい。寂寥王よ。いさぎよく、あなたの間違いを認めて下さい」ゴーストトレインが後にいた。中にはチャクラの中枢頭脳がのっている。
「おお、お前たちか、お前たちも手伝ってくれ、はやく」
 が、ゴーストトレインとチャクラはその命令には従わない。
「寂寥王よ、お気づき下さい。戦闘16面体が何かを……」
「何だというのだ」
「彼らはあなたの良心じゃ」
「あなたが古代に構成した機械良心体です」「何。何を世迷い事を言っているのだ。2人とも」
「覚えておられないのなら、お見せしましょう。しかたがない」
 ゴーストゴーストトレインの眼から映像が上空に写しだされていた。チャクラの中枢頭脳が覚えている古代の記憶だ。寂寥王と16面体はその映像に見いる。
「ああっ」寂寥王は叫び、泣き出していた。16面体はただただ見とれている。突然、寂寥王の体が激動した。
 寂寥王の体が3つに分離する。寂寥王と一角獣にされていたレムリア、それに世界子であるトリニティ。
 トリニティは三位一体だつた。いままでのレムリアの体、一角獣は霊体であった。ちょうど一角獣レムリアが駆け込んでくる。二つの体が一体化する。
「私は、私は一体今まで何をしていたのだ……」寂寥王の顔から血の気がひいていた。
「寂寥王よ、ワシラは、このような姿に形を変え、あなたの分身がかえって来られ、この星を元に戻していただけることを長い間まっておりましたのじゃ」
「私のおかげでこの世界が腐敗したのだな」「また、お前を一角獣に変えたのも私だというわけか」レムリアに向かって言った。
「なあんだ。ユニって、あたしのお母さんだったのか。ああ、つまらない」
「トリニティ、あなたこそ何を言っているの。あなたは世界子よ。もっとそれらしく勉強しなさい」
「ああ、また、勉強か」
「寂寥王よ、ワシラが、過去に一つの共同体の船であったことを思い起こしてくだされ。機械城が船のメインボディであり、ワシ、チャクラが、他の我々が、一体何であったかを。そうすれば、我々が何を目的としていたかお解りになるはずじゃ。この船を中心コアとしてこの星を作られた。ワシラはあなたから、切り捨てられた手足なのですじゃ。ただ、レムリアさまは、ワシ、チヤクラに子供を預かるようにいわれましたのじゃ。それがトリニティさまじゃ」チャクラが言う。
「そして、16面体は、あなたが、この腐敗惑星を作られたときに破棄された機械良心体です。機械にあなたの良心を移植し、埋め込んでおかれたのです。ただ、16面体はその良心のゆえに、あなたの行動に我慢できなかったのです。この腐敗惑星の残酷さゆえに。それに機械砂がこの16面体の意識がおかしくなりました。切り離されたがゆえ、あなたを憎むようになったのです。彼らはあなたを憎み、トリニティのコピー、であるアリスまで作ってしまいました。この星を改造しょうとしてね」かっては船の付属生体宇宙艇であったゴーストトレインが続けて言った。
「そうだ。残念ながら、そいつらが教えてしまったが、その最初からの歴史を知り、私は監視機構を作り上げたのだ」ラフラタであったものが言った。
「寂寥王よ、お目覚めください。あなたは一人ではない。我々という味方がいるのです」16面体が言った「寂寥王よ、私めも、目覚めました。どうか、私を臣下として、お許しください。この私の機械城をこの腐肉どもとの戦いにお使いください」
「ワシの水羊宮とこの機械城があれば、鬼に金棒じゃ」
「オット、わたしも忘れちゃ困りますよ」ゴーストトレインが言った。
「私もいるわ」一角獣の姿から元の姿に戻ったレムリアが言った。
「それにあたしもね」トリニティもこわごわ言う。
「我々のファミリーがあれば、何を恐れることがありましょうや」 チャクラが言う。
「皆許せ。私は一人ではないのだな。許してくれ。反省する」寂寥王は皆の前にひざまずいた。
 そして、腐肉のかたまりにたいしていった。「生き物たちよ、許してください。私がすべて悪いのだ」
「寂寥王よ、何を言われる」
「聞いたか、皆、寂寥王は罪を認めた。寂寥王を殺せ」ラフラタであったものが言った。「私を好きにしてくれ」
「寂寥王どうしても」
「皆、よいか、私はこのものたちに飲み込まれる。その行為がこのものたちに対する罪滅ぼしになる。どうか、私を助けようとしないでくれ。これは、最期の私の願いだ」
「寂寥王よ」
「あなた」
「お父さん」
「ははあ、おとなしく、私の軍団に下るか。寂寥王よ、まだ、この腐肉の中には中性子爆弾が残っている。レムリアよ。残念だったな。寂寥王よ、完全に吹き飛ばしてくれる」
「まて、それはおかしい、ラフラタの意識よ」風の意識の幾つかが言う。
「もう、遅いわ」腐敗惑星の表面が腐敗巨人として収斂した。
「寂寥王よ、我々はお前を恨む」
「我々、すべての生物がお前のために、こんな醜い姿に返られたのだ」
「王よ、我々の耐えることのない悲しみと死の瞬間を思え」
 腐肉のかたまりが、王の体をすっぽりと包みこんでいた。寂寥王はその中で、数多くの死の瞬間を味わった。そして、完全に死ぬことのできない悲しみの心を知った。
「寂寥王よ、お前の力をもってすれば、我々のこの苦しみを取り除くことができるだろう。この逃れることのできない死の淵から、我々を生の空間に戻してくれ」
『寂寥王よ、あなたがなぜ、どこかに逃避され、またトリニティを残したか考えてくだされ』急にチヤクラの声が王の元に届いた。
「なぜだ」
「私はわずかばかりでも、再生を夢みていたのか」
 腐肉の巨人体の圧力で圧しつづけられる。苦悩する寂寥王の意識が、数千の腐肉の意識に責めさいなまれていた。が、寂寥王はこの練獄の中で自分が昇華される。罪が償われると考えていた。
 寂寥王は逃れようにない苦悩の中で、一人、昔を思い出す。

 大いなる昔、この古代世界に電磁波が降り注いだ。そのとき以来、世界は腐り始めたのだ。その電磁波をひきよせたのは、自分の生命の寂しさゆえだ。一人がゆえにだ。そのために皆と共に滅びようとしたのだ。
 やがて、この腐肉の意識の中にすこしずつ、寂寥王の深い寂寥感が押し寄せて浸透していった。
 王は考える、この腐肉たちの苦しみを解消する方法は。もし、彼らをもとに戻すことができるならば。
「母さん、お父さんや、この腐肉たちを助けてあげる方法はないの、あたしはもう、戦いはいや」本当に疲れるもの。
「あなたたち、何か方法は」
「我々には無理です」
「皆を元にもどしてあげてよ」トリニティが涙を流しながら叫んでいた。
「王なら、その力がおありじゃ」
「そうするように王に呼びかけましょう」
「風の意識をかりましょう。風よ、お願い、聞いて、風も腐敗の風でなくなりましょう」レムリアが叫ぶ。
 風の意識が腐肉の意識を動かす。
「寂寥王よ、あなたを許そう。この我を元の体に戻してくれるのなら」
「待て」ラフラタであるものがいった。
「お前たち、どういうつもりだ。この寂寥王を倒すのだ」
「ラフラタよ。お前はこの寂寥王の心の寂しさを感じられないのか。孤独が解らないのか。創造者の苦悩が理解できないのか」
「ラフラタよ、お前の心をのぞいてみた」
「お前には心が存在しない」
「つまりは、ダークサイドの人間というわけだ」
「寂寥王よ、我々はあなたを信用します。許しましょう」
「ラフラタの意識を我々より排除しょう」
「やめろ、お前たち、どちらの味方だ」が、ラフラタの意識は数千、数万の意識から攻撃を受け、分断、消滅させられた。

 やがて、地表は平和に満ちた。腐肉と風はすべて、もとの生物体に戻った。この星は生物やロケットなどの機械類であふれていた。 もとの姿に戻った回収子は、肉体と霊体が合体したレムリアに言う。
「君はもう帰るつもりは、ないのだな」
「そう、ゲノン、許して。私にはこの子がいるの。それに、この世界をもとに戻す手伝いをしなければならない」
「では、君の守護神には、君が死んだと報告しておこう」回収子は去って行った。
「ラフラタはなぜ、急に我々を攻撃してこなかったのでしょう」レムリアが言った。
「寂寥王の分身が帰ってくるのを待っていたでしょう」ゴーストトレインが答える。
「罠を作って待っていたのだ。それゆえ、この星が腐敗したのはあやつのせいかもしれない。寂寥王の心を惑わせて、この星を寂寥王の荒廃した心の反映としたのだ」16面体が言う。
「ダークサイドか」チャクラが尋ねる。
「だから、彼らは、世界をこのまま、破滅させたいのだ、それには寂寥王を殺してしまう、あるいは、行動できなくしてしまうのが一番なわけだ」16面体の考えだ。
「それが、奴らダークサイドの野望じゃろう」チャクラも考える。「では、あたしに最初にあいにきた男はお父さんの分身、残留意志なのね」
「そうよ、別の星を再生していたのだと思うわ」レムリアが言う。
「では、まだ、寂寥王に働いてもらわねばならないわけですね」ゴーストトレインが言う。「そういうことじゃ。レムリアとトリニティには悪いが」
「かわいそうな、お父さん」トリニティは思った。まだ、働かせるの、いいかげんにしたら。
 寂寥王は横たわっていた。疲労困狽していた。この腐敗惑星をもとどうりにする行為によって体力をすべて使い果たしていた。
「寂寥王よ。この世界の破滅の原因すべての責任はあなたにあります」皆の声だ。
「眠らせてくれ、皆よ」
「だめです、あなたのすべき仕事がまだ残っています」
「仕事は何だ。何をさせようというんだ」
「あなたの滅ぼした世界を再生せねばなりません。あなた自身が、閉鎖した数多くの世界を再び蘇らせねばなりません。次々とね」

 フライングデッキの残骸が再生されて、そこから、一機の小型宇宙船が飛びあがっていく。ミラーから乗っていた船だった。それには誰も気づかない。何しろ、次から次へと、色々な船と生物がこの惑星から飛び出して行くのだ。
「ツラン、今の星では失敗したな」影の男が言った。
「しかたがありませんね。我々闇世界との戦いは永久に続きましょう。ミラーも、もう少しできる男かと思ったが」
「私が巫女の姿になってディレクションしたのですがね。勢力が足りなかったかもしれませんね」
「まあ、よいわ、寂寥王の分子が行く先々で、我々の闘いが続く」 再生したラフラタだった生物が言った。ラフラタは自分の精神のコピーをこの小型宇宙船のコンピュータ、ツランの記憶域中に保存しておいたのだ。自分がもし、打ち倒されたときの用心、保険のためだ。ラフラタは再生されていない。
 トポール大佐の独立装甲兵団も全員、再生されている。
「今度は、すべての財宝、情報をいただくぞ。寂寥王、その名前は変わろうと。奴の分身をチェックし、トレースしろ、ミラー」

(23)
『私は旅立った。別のトリニティに会うために。外の太陽系かもしれない。私は多くを知らない。私のたどり着いた星からまた、私の分身が旅立つのだろう。この世界を総て復活させるために。
 私は自分の本名をいまだ知らない』

●終わり●

SF小説■腐敗惑星■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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